
2025年1月以降、中小企業向けの資金繰り支援策は大きな転換期を迎えることになります。
これまでの「コロナ対応型の緊急融資」から人手不足対策や賃上げなど、「経営課題解決のための融資」へと重点がシフトするからです。
中小企業庁が2024年12月に発表した新たな支援策では、経営改善・事業再生・成長促進が推進されており、企業経営者はこの変化に対応した戦略的な資金計画の見直しが求められています。
本稿では、2025年以降の新たな支援策のご紹介と、経営者が今から取り組むべき対策について解説します。
出典:「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を踏まえた事業者支援の徹底等について要請しました (METI/経済産業省)

コロナ時代の終焉|2025年3月までに終了する支援策
新型コロナウイルス感染症対策として導入された緊急支援策は、段階的に終了を迎えます。
2024年12月には国のコロナ融資の取り扱いがすでに終了しており、2025年2月には国のコロナ資本性劣後ローンが、2025年3月には国のセーフティネット融資の金利引き下げ措置、経営改善サポート保証(コロナ対応)、そして新型コロナウイルス対応緊急資金(京都府内一部地域)といった主要な支援策が終了します。
≪過去に当社コラムにてご紹介したコロナ融資 ≫
コロナ保証は6月末で終了?まだまだ使えるコロナ融資の最新情報と活用方法【令和6年8月最新版】 | 税理士なら京都の新経営サービス清水税理士法人
これらの支援策はコロナ禍での事業継続を支える重要な役割を果たしてきましたが、経済の正常化に伴い、より持続可能な経営体質の構築を促す政策へと転換されるのです。つまり、企業の存続可能性を問わずバラまいていた融資の引き締めを行い、成長見込み、再生見込みのある企業への支援にシフトしていきます。
2025年以降の新たな支援の方向性
2025年1月以降の中小企業向け資金繰り支援は、「急場しのぎ」の資金供給から、中長期的な経営基盤強化を目指す支援へと質的な転換を図ります。
緊急時の「生存」から持続的な「成長」へとステージが移行する中、企業は単なる資金調達だけでなく、経営改善計画の策定や事業再構築に積極的に取り組むことが求められるようになります。
新たな支援策の特徴は、金融機関との関係強化を促進することにあります。

特に、プロパー融資(保証協会の保証を付けない融資)を促進する制度が新設されるなど、金融機関と企業の直接的な信頼関係構築に重点が置かれています。これは、企業の経営状態や将来性を金融機関が直接評価(事業性評価)する流れを強化し、より持続可能な金融支援の仕組みを構築するねらいがあります。
この変化は、単に資金調達の手法が変わるというだけでなく、企業経営のあり方そのものの変革を促すものです。
人手不足対応や賃上げといった構造的な経営課題に取り組みながら、競争力を維持・強化していくための施策として位置づけられています。経営者はこの政策転換を単なる制度変更と捉えるのではなく、自社の経営改革の好機と捉える視点が重要です。
2025年から始まる5つの新支援策の詳細
① 協調支援型特別保証(中小企業庁)
2025年から新設される協調融資制度は、金融機関からのプロパー融資を促進するための保証制度です。保証協会保証付きの融資と組み合わせたプロパー融資を円滑にすることにより、人手不足対応などの経営改善を支援することが主な目的です。
保証限度額 | 2億8,000万円 |
保証期間 | 10年 |
据置期間 | 運転資金:1年以内 設備資金:3年以内 |
保証割合 | 80% |
通常の保証協会付き融資との大きな違いは、保証の枠が別枠で整備されていることと、国からの補助で保証料が割安になっている点です。メインバンクありきの融資制度となっているので、メインバンクとの関係構築や経営相談など総合的な支援を受けられる機会となります。
② 経営改善サポート保証(経営改善・再生支援強化型)
2025年4月から創設される経営改善サポート保証(経営改善・再生支援強化型)は、2025年3月で終了する経営改善サポート保証(コロナ対応)に代わる新たな保証制度です。この制度は、中小企業活性化協議会などの支援を受けて経営改善計画を策定し、計画的な経営改善に取り組む企業を支援するものです。
具体的な制度設計の詳細はまだ発表されていませんが、コロナ対応型と異なり、より能動的な経営改善への取り組みが求められることが予想されます。経営者は自社の経営課題を明確に把握し、実効性のある改善計画を策定することが重要になります。コロナ融資の借換も可能(100%保証は100%保証での借換可)となっております。
上記2つの支援策の参考:
物価高や人手不足等の影響を受けている中小企業者に向けた新しい保証制度の取扱いを開始します | 中小企業庁
③ 資本性劣後ローン対象企業の拡大(日本政策金融公庫)
資本性劣後ローンは、金融機関が融資審査を行う際に自己資本とみなすことができる特殊な融資制度です。2025年からはこの対象企業が拡大される予定です。資本性劣後ローンは返済順位が他の債務よりも劣後するため、財務基盤の強化に役立ちます。
特に成長投資を計画している企業や一時的に財務状況が悪化している企業にとって、この制度の拡充は大きな朗報となります。通常の融資では資金調達が難しい状況でも、資本性劣後ローンを活用することで必要な資金を確保し、事業継続や拡大の機会を得ることができます。借入金額が多いという理由で融資を断られていた企業は是非チャレンジしてみて下さい。
金利は利益によって変動し、赤字の場合は0.5%、黒字の場合は3%台となっております。
参考: 挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)|日本政策金融公庫
④ 危機対応後経営安定貸付制度の創設(日本政策金融公庫)
2025年から新たに創設される危機対応後経営安定貸付制度は、コロナ禍のような危機状況後の経営安定化を支援するための新制度です。詳細はまだ発表されていませんが、コロナ融資の返済が本格化する2025年以降、多くの企業が直面する可能性のある返済負担の増加に対応するための支援策と考えられます。
この制度は、危機対応融資からの移行期に企業の資金繰りを安定させる重要な役割を果たすことが期待されています。経営者は自社の返済計画を見直し、必要に応じてこの制度の利用を検討することで、安定した事業運営を継続することができるでしょう。
⑤ 早期経営改善計画策定支援の拡充(中小企業活性化協議会)
既存の早期経営改善計画策定支援が2025年から拡充されます。
この支援は、中小企業が早期段階で経営改善計画を策定することを促進するもので、対象企業の範囲が拡大される予定です。これにより、より多くの中小企業が専門家の支援を受けながら自社の経営状況を見直し、改善策を講じる機会を得ることができます。
資金繰りが厳しく外部専門家への費用捻出が厳しい企業に対し、当社のような税理士などの専門家である認定経営革新等支援機関対する費用の一部を補助する制度となっています。
早期に経営課題に対応することは、事業の持続可能性を高める上で極めて重要です。
特に昨今の物価上昇や人手不足といった厳しい経営環境において、先手を打った経営改善は企業の生存率を大幅に向上させます。経営者はこの支援を活用して、自社の強み・弱みを客観的に分析し、具体的な改善策を策定することが求められます。
参考: 早期経営改善計画策定支援 | 中小企業庁
将軍の日(中期経営計画策定支援) | 新経営サービス清水税理士法人
コロナ融資の借換対応と活用戦略
多くの中小企業がコロナ融資を利用している現状において、2025年以降はその返済と借換が大きなテーマとなります。
京都府では、「 新型コロナウイルス対応緊急資金 」という融資制度が2025年3月31日に終了します。各自治体でも中小企業を支援する制度を整えていますが、きちんと制度を理解して活用している企業は少ないのではないでしょうか。
参考: 京都府中小企業金融対策のトピック/京都府ホームページ
銀行からすればコロナ融資の貸し倒れを国が保証してくれているので、現時点で積極的に提案を行う必要はありません。ましてや、国債金利が上昇している局面で手許資金を厚くする方が得策となります。企業経営者自らが情報収集を行い、先手で対応していくことが企業の資金繰りを回すうえで非常に重要となります。
「変化」を「機会」に変える経営姿勢の重要性
2025年1月以降の中小企業向け資金繰り支援策の転換は、コロナ時代からの脱却と新たな成長フェーズへの移行を象徴しています。緊急的な「支援」から持続的な「成長支援」へと政策の軸が移る中、企業経営者には受け身の姿勢ではなく、能動的に自社の経営改革に取り組む姿勢が求められます。
支援策の変更を単なる制度変更と捉えるのではなく、自社の経営を見直し、強化する機会として活用することが重要です。資金繰りの安定化は事業継続の基盤ですが、真の企業価値向上には、商品・サービスの付加価値向上や人材育成、業務効率化など、多角的な取り組みが不可欠です。
2025年以降の新たな支援策を最大限に活用するためには、早めの情報収集と準備が鍵となります。
各支援機関や金融機関との連携を深め、自社に最適な支援策を選択・活用する戦略的思考が、これからの厳しい経営環境を乗り切るための重要な武器となるでしょう。コロナ禍を乗り越えてきた経験と教訓を活かし、より強靭で持続可能な経営基盤の構築に向けて、今こそ行動を起こす時です。
新経営サービス清水税理士法人では、支援機関として資金調達支援や、経営計画策定(将軍の日)、経営再生支援を行っております。「どんなことでもどんな場面でも相談いただける税理士法人」であるために、経営者の皆様との密なる情報共有や状況に応じた最善策のご提案に努めています。
今、資金繰りで悩んでおられる事業者の方は、当社に一度ご相談ください。顧問契約中の税理士がついている方でも、なかなか経営相談ができない場合は当社にお声がけください。秘密厳守でご相談に応じます。 資金繰りの不安を解消し、企業の安定した運営をサポートするための第一歩として、専門家へのご相談をご検討ください。
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