相続した土地の中に「遠方にあって見たこともない土地」や「全く活用できないのに管理が大変な土地」はありませんか?
そういった土地に対しては、
- そもそも相続放棄をして相続をしない
- 相続してから売却する
- 国に引き取ってもらう
といった対処法があります。
ただ、相続放棄をした場合でも遺言で指定されていれば相続することになりますし、売却しようとしても買い手が見つからない、売れるまでに時間がかかるといったことが起こるかもしれません。
そこで、今回は令和5年に新たに創設された3つ目の「国に引き取ってもらう=相続土地国庫帰属制度」について解説したいと思います。
「相続土地国庫帰属制度」とは
「相続土地国庫帰属制度」とは、相続によって取得したいらない土地で、一定の要件を満たしている土地であれば管理費用として一定の負担金を支払うことで国に引き取ってもらえるという制度です。
申請が出来る人
相続又は遺贈によって土地を取得した相続人が対象者になります。
もともと相続人であり、その相続で土地を取得した人しか対象にならないので、売買によって自ら土地を取得した人や遺言で土地を取得した孫などは対象から外れることになります。
ただし、共有持分を取得した相続人がいる場合は、他の共有者がこの制度の対象でなくても共有者全員が共同で申請すればこの制度を利用することができます。
引き取ってもらえない土地
以下のような状態の土地は引き取ってもらうことができません。
(1) 申請をすることができないケース
- 建物がある土地
- 担保権や使用収益権が設定されている土地
- 他人の利用が予定されている土地
- 土壌汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
(2) 承認を受けることができないケース
- 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
- 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
- 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
- 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
- その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
引き取ることができない土地の詳細については総務省のHP(moj.go.jp)に掲載されておりますので、そちらをご覧ください。法務省:相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件
費用について
対象の土地が引き取ってもらえるかどうかの審査手数料として土地一筆あたり14,000円の審査手数料が必要になります。
次に、申請が承認され実際に引き取ってもらえることになったあと、10年分の管理費として負担金を収める必要があります。こちらも法務省のHP(moj.go.jp)に負担金の算定式が掲載されておりますのでそちらをご覧ください。法務省:相続土地国庫帰属制度の負担金
申請先、申請方法
申請先は引き取ってもらいたい土地が所在する都道府県の法務局(地方法務局)の本局の不動産登記部門で、支局や出張所では申請できないようです。
提出先の法務局が分かれば提出書類を準備し、その窓口に直接提出するか、郵送でのやりとりが可能です。
提出書類
申請の際には、申請書に添付書類を付けて提出する必要があります。申請者の状況によって追加で必要な添付書類もあるので、その一部を記載します。
共通して必要なもの
- 申請書
- 承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
- 承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
- 承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真(記載例は上記のとおり)
- 申請者の印鑑証明書(市区町村作成)
「遺贈によって土地を取得した相続人が添付必須の書面」 - 相続人が遺贈を受けたことを証する書面
→遺言書や相続人であることが証明できる戸籍謄本など
その他、相続土地国庫帰属制度については法務省HPや政府広報オンラインにて詳細情報をご確認いただけます。
おわりに
相続土地国庫帰属制度の解説は以上です。
この制度は最終手段として、売却が可能なら売却してしまった方が良いと思います。
ただ、活用もできず売却もできない土地であれば所有しているだけで固定資産税や管理費用が発生し、いずれは次の世代が同じ負担を負うことになってしまいます。相続した土地が不要だった場合、自分の代で整理できるようにこの制度を活用してみてはいかがでしょうか?
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