三共済とは
三共済とは、国(独立行政法人)が運営する共済制度であり、①小規模企業共済、②倒産防止共済(セーフティ共済)、③中小企業退職金共済(中退共)の3つの制度のことを指します。中小規模の法人・個人事業主の方は節税手段としてもよく使われるものですので、まだ利用されていない方はこの機会にぜひご検討ください。
三共済の概要と節税のポイント
① 小規模企業共済
概要
小規模企業共済は小規模な会社の経営者や役員、個人事業主向けの積み立てによる退職金制度です。役員の方が会社を退職された時や個人事業主が事業を辞められた際にその後の生活や事業再建のための資金を準備しておくことができ、掛金については個人の税金に対する節税効果があります。
加入資格
- 常時使用する従業員数が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主または会社役員
- 上記事業に該当する個人事業主の共同経営者
掛金について
掛金は月額1,000円から70,000円の間、500円単位で選択することができます。納付方法については、月払い・半年払い・年払いが可能です。また、掛金の増額や減額、前納することもできます。
税額控除について
掛金は全額、小規模企業共済等掛金控除として所得控除を受けることができます。前納をした場合などにも一年間支払った掛金を全額控除するこができます。一方で所得控除として利用されるため事業の経費にすることはできません。
共済金受取について
解約した際に積み立ててきた共済金を受け取ることができます。金額に関しては解約理由や契約者の立場によって金額は変わってきますが、掛金納付月数が240か月未満で解約をした場合、受取額は掛金を下回ってしまいます。具体的な受取額の計算は中小機構のHP等をご確認ください。また共済金を一括で受け取るか分割で受け取るか選択することが可能で、基本的には一括で受け取った場合は退職所得、分割で受け取る場合は雑所得となります。
② 中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)
概要
倒産防止共済は、取引先が倒産した際に連鎖倒産を防ぐための共済制度で、無担保・無保証人で借入を行うことができ、掛金は会社または個人事業の経費として損金にすることが可能です。また、解約の際には解約手当金を受けることができます。
加入資格について
以下の要件に該当し、一年以上事業を継続している中小企業者が加入することができます。
業種 | 資本金または出資の総額 | 常時使用する従業員数 |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以上 |
小売業 | 5,000万円以上 | 50人以下 |
ゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
ソフトウェア業 | 3億円以上 | 300人以下 |
旅館業 | 5,000万円以上 | 200人以下 |
掛金について
掛金については月額5,000円から20万円の範囲内を5,000円単位で選択することができ、掛金総額が800万に達するまで積み立てることができます。また小規模企業共済と同様に前納、増額、減額(※条件あり)することが可能です。
税額控除について
払込掛金は法人の損金、個人事業の必要経費に算入することができます。まとめて前納した場合も全額支払をした期の経費とすることができます。
解約手当金について
解約した際の手当金については基本的に掛金を12か月以上納めていれば掛金の8割以上、40ヶ月以上納めていれば全額を受けることができますが、解約の理由により支給率が変動するため具体的な金額については中小機構のHP等をご確認ください。
借入について
倒産防止共済に加入されると取引先が倒産し、売掛金など債権の回収が困難な場合に共済より無担保、保証人なしで借入を受けることができます。借入額は被害額と掛金総額の10倍いずれか少ない方の額までとなります。また、取引先の倒産が無くても資金が必要となった場合には解約手当金の95%までの額を一時的に借入することもできます。
③ 中小企業退職金共済
加入要件
加入することができる条件は以下の通りとなります。法人だけでなく個人事業主の場合も加入することができます。
業種 | 加入要件 |
---|---|
一般業種 | 常時従業員数300人以下、または資本金・出資金3億円以下 |
卸売業 | 常時従業員数100人以下、または資本金・出資金1億円以下 |
サービス業 | 従業員数100人以下、または資本金・出資金1億円以下 |
小売業 | 常用従業員数50人以下、または資本金・出資金5,000万円以下 |
中退共へ加入した企業の従業員は原則全員加入対象者となりますが、試用期間中の従業員や短時間労働者、休職中の従業員などは加入させる必要はありません。
掛金について
毎月の掛金は5,000~30,000円の範囲16通りの中から従業員ごとに選択することができます。週30時間未満の短期労働者の場合、2,000円、3,000円、4,000円の中から選択することもできます。
掛金の増額については届出を出すことでいつでも変更することができますが、減額する場合は従業員の同意が得られた場合と現在の月額掛金を継続することが困難であると厚生労働大臣が認めた場合のみ掛金の減額をすることができます。
税額控除について
企業や事業主が支払う掛金については全額法人の損金、個人事業の必要経費に算入することができます。前納した場合も全額支払をした期の経費とすることができます。
国からの援助
新規で中退共に加入すると加入後4か月目から1年間、掛金の半分(従業員ごとに5,000)円まで)国からの助成を受けることができます。
また、月額18,000円以下の従業員の掛金を増額する場合、増額分の3分の1を1年間分、国からの助成を受けることができます。ただし20,000円以上の掛金月額からの増額は助成の対象にはなりません。
退職金について
支給される退職金については従業員の加入期間によって変動します。納付月数が11か月以下の場合支給はされず、12~23か月では掛金を下回り、24~42か月で掛金相当額となります。43か月以降は運用利息などが加算され、長く加入をしていた従業員ほど有利に退職金を受けることができます。
まとめ
以上が三共済の内容となります。 申請には多少時間が掛かるため、加入を検討しておられる際はお早めに手続きを進めていただくことをおすすめいたします。 詳しくは各共済のHPなども参考にしてください。
また、申請の手続きや月額掛金のシミュレーションなど、中小企業の経営者様向けに弊社にてお手伝いできることもございます。経営状況と節税に関するご相談があれば新経営サービス清水税理士法人まで、お気軽にお問い合わせください。