税務・経営ニュース
COLUMN

税制解説

「扶養」とはどんなもの??
~税法の扶養と社会保険の扶養、2つの制度を理解して
 正しく活用しよう~

 京都にて創業60年の歴史がある新経営サービス清水税理士法人より、皆さまの身近な税務にまつわる耳より情報をお届けいたします。

 配偶者が退職したり、子供が大きくなってきたり、両親と同居をはじめたり・・・生活の負担が大きくなり家族の収入が減ってしまった場合に、「これって扶養に入った方がお得になるんじゃない?」と、考える方も多いのではないでしょうか。「扶養に入ることでメリットがある」と思っておられるかもしれませんが、実際は誰にどんなメリットがあるのか正しく理解できていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。本日は「扶養」についてお話しさせていただきます。

                    

『扶養』には<税法の扶養>と<社会保険の扶養>がある

『扶養』には、<税法の扶養>と<社会保険の扶養>の2つがあることをご存じですか。同じ扶養という言葉を使っていても、税法の扶養と社会保険の扶養では、それぞれ意味や制度は大きく異なります。当社は税理士法人ですので、税法に関わる扶養のメリットを中心に2つの扶養の違いについてご案内させていただきます。

                                   

税法の扶養について

 <税法の扶養>とは、扶養の対象となることで納税者の所得税や住民税の額を控除することができる制度をいいます。例えば、妻が夫の扶養に入った場合、控除を受けることができるのは納税者である夫です。

 所得税法上の扶養には、「扶養控除」、「配偶者控除」、「配偶者控除の特例としての配偶者特別控除」があり、その年の12月31日の時点で以下の要件を満たす場合に控除を受けることができます。

                       

税法の扶養に入るための条件

  • 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます)、又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること、又は民法の規定による配偶者であること
  • 納税者と生計を一にしていること
  • 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること             ※ 給与のみの場合は給与収入が103万円以下
  • 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、又は白色申告者の事業専従者でないこと
所得金額とは、給与収入から所得控除額を差し引いた残額をいいます。給与収入が103万円を超えると扶養を受けることができなくなります。通称103万円の壁と呼ばれるものです。

引用:国税庁「No.1180 扶養控除」、「No.1191 配偶者控除」

                                 

税法の扶養に入るメリット

 前述したように、上記条件を満たした対象者を扶養に入れることで、納税者は各種控除を受けることができます。控除額は以下の通りです。

<配偶者を扶養に入れる場合>

納税者の所得別 配偶者控除額一覧

  控除を受ける納税者 本人の合計所得金額一般の控除対象配偶者の 控除額老人控除対象配偶者の  控除額(※)
900万円以下38万円48万円
900万円超950万円以下26万円32万円
950万円超1,000万円以下13万円16万円
(※)控除対象配偶者のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の方をいいます。

引用:国税庁「No.1191 配偶者控除」

                        

 配偶者の合計所得が48万円を超えて配偶者控除の適用を受けることができない場合であっても、納税者の合計所得金額が1,000万円以下であり、かつ配偶者の合計所得金額が133万円以下である場合には特例として配偶者特別控除の適用を受けることができます。

納税者の所得別 配偶者特別控除額一覧

        控除を受ける納税者本人の合計所得金額
配偶者の合計所得金額900万円以下900万円超950万円以下950万円超1,000万円以下
48万円超95万円以下38万円26万円13万円
95万円超100万円以下36万円24万円12万円
100万円超105万円以下31万円21万円11万円
105万円超110万円以下26万円18万円9万円
110万円超115万円以下21万円14万円7万円
115万円超120万円以下16万円11万円6万円
120万円超125万円以下11万円8万円4万円
125万円超130万円以下6万円4万円2万円
130万円超133万円以下3万円2万円1万円

引用:国税庁「No.1191 配偶者控除」

育休や産休中の配偶者控除の適用については、<育休中は扶養の対象になる?育休中の配偶者控除について理解を深めよう!>をご覧ください。

                    

<両親や子供などの親族を扶養に入れる場合>

区分控除額
一般の控除対象扶養親族38万円
特定扶養親族63万円
老人扶養親族(同居老親等以外の者)48万円
老人扶養親族(同居老親等)58万円

 詳細な扶養の対象者については、<年末調整に詳しくなろう <扶養控除編>>をご覧ください。また、別居している親族に対しても扶養控除が適用される場合があります。詳しくは<「同居していない親」も扶養の対象になる?扶養控除の概要とその条件について確認しよう!>をご覧ください。

                               

社会保険の扶養について

<社会保険の扶養>とは、一定の要件を満たし扶養に入ることによって、扶養対象者が社会保険料を負担することなく保険の適用を受けることができる制度をいいます。

                              

社会保険の扶養に入るための条件

社会保険の扶養に入るための条件は以下の通りです。

  • 家族であること
  • 生計維持関係にあること
  • 同一世帯であること

                         

また、収入の基準として、以下の条件を満たす必要があります。

  • 年間収入が130万円未満であり、かつ被保険者の年間収入の2分の1であること

※家族が扶養対象者に当てはまるかどうかは、お勤め先の担当部署へ詳細を確認してください。

                            

<税法の扶養>と<社会保険の扶養>の違いを理解し、正しく制度を活用しよう

 例えば、夫の年収が750万円、妻の年収が120万円の世帯において妻が夫の扶養に入る場合、2つの制度をどのように活用できるか、簡単にシミュレーションしてみましょう。

 まず、税法上の扶養について要件と照らし合わせてみます。扶養対象者が配偶者のため、「配偶者控除」または「配偶者特別控除」が適用される場合があります。この場合、妻の年収が120万円なので合計所得金額は48万円を超え、「配偶者控除」の適用を受けることはできません(所得の計算方法は<年末調整に詳しくなろう <給与所得控除編>>をご覧ください)。ただし、妻の年収が130万円以下であり、かつ納税者である夫の合計所得が1,000万円以下となるため、「配偶者特別控除」の適用を受けることができ、夫が支払うべき所得税や住民税を軽減させることができます。社会保険の扶養においては、妻の年収が130万円未満かつ、夫の年収の2分の1以下であるため、対象となります。

参考: 国税庁     
    全国健康保険協会

                                

 税法の扶養に入るためには、納税者が年末調整や確定申告にて、所定の申告用紙に正しく記入して申告を行います。また、社会保険の扶養に関しては、お勤め先の担当部署にご確認ください。

                               

 本日、ご紹介させていただいたそれぞれの制度にご自身が当てはまるか不安な方は、お勤め先やお近くの税務署・保険協会へご相談ください。

                              

税務のお困りごとは新経営サービス清水税理士法人にご相談を!

従業員の給与計算や年末調整・確定申告を一元化して経理業務を簡略化させたい経営者の方は、新経営サービス清水税理士法人までご相談ください。

お問い合わせは専用フォームをご利用ください。


新経営サービス清水税理士法人からのお知らせ

新経営サービス清水税理士法人の相続承継部門が担当する「京都相続・遺言相談所」サイトがリニューアルいたしました。
相続に関するお悩みや不安ごとを少しでも和らげるように、女性税理士を中心に細やかなサポートができる相続・遺言のプロが皆さまのお悩みにお応えします。

お問合わせCONTACT

ご質問やご相談は、お電話またはメールにてお気軽にお問合わせください