昨今では女性の社会進出が進み、2021年には共働き世帯の割合が68.7%にのぼっています。例えば夫と同様に妻も仕事をしている場合、妻の収入金額によっては夫の扶養に入ることが出来ず、配偶者控除を受けられないということもありますよね。では、今回のテーマである「育休中」は扶養についてどのように取り扱われるのでしょうか。今回は育休中の配偶者控除についてご説明していきます。尚、今回のコラムでは妻が育休に入る場合を想定してご説明いたしますが、夫が育休を取得する場合も同様です。本文の「妻」と「夫」を差し替えて読み進めてください。
①そもそも育休中って扶養に入れるの?
育休中は妻の収入が減少するため、共働き世帯であっても条件を満たせば夫の扶養に入ることができます。夫の扶養に入ることで夫側の所得税や住民税の額が下がるた め、支払う税金が少なくなり、結果として家庭にお金が残しやすくなります。
②扶養に入るための条件とは…
夫の扶養に入るためには次の2つの条件どちらも満たす必要があります。
・育休中の妻の所得が133万円以下であること(給与のみであれば年収201万円以下)
・夫の所得が1,000万円以下であること(給与のみであれば年収1,195万円以下)
どちらか一方でも条件を満たさない場合は扶養に入ることが出来ません。
※給与所得者の「年収」と「所得」の違いは?
「年収」とは勤めている会社から支払われた1年間の給与収入総額(額面の金額)を指し、その年間の給与収入から給与所得控除額を差し引いた金額が「所得」となります。また、ここで言う「年間」とは税金を計算する上での期間(1月1日から12月31日)を指し、育休を実際に取得した期間のことではありませんのでご注意ください。
③育休中にもらえる手当は所得に含まれる?
妻が給与所得者で所得は133万円よりも少ないけれど産休・育休中に受け取った手当がある…といった場合はどうなるのでしょうか。産休や育休の期間中は出産手当金、出産育児一時金、育児休業給付金など様々な手当を受け取ることができます。給付金の金額は決して少なくない為、少し不安に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これらの給付金は非課税扱いとなり所得には含まれません。つまり、給与以外にこれらの非課税手当てを受け取っていたとしても所得の計算上は給与の金額のみで所得金額が決まります。
④配偶者控除の種類
Ⅰ. 配偶者控除
妻の年間の合計所得金額が48万円以下(所得にかかる収入が給与収入のみの方の場合は年収で103万円以下)である場合に適用する事ができます。ただし、先述したように夫の所得が1,000万円を超えた場合は配偶者控除を適用することはできません。また青色申告者の事業専従者として給与を受け取っている、もしくは白色申告者の事業専従者である場合も配偶者控除の適用はできないため注意が必要です。
参考: No.1191 配偶者控除|国税庁 (nta.go.jp)
Ⅱ. 配偶者特別控除
妻の年間の合計所得金額が48万円超133万円以下(所得にかかる収入が給与収入のみの方の場合は年収で103万円超201万円以下)である場合に適用する事ができます。配偶者控除と同じく夫の所得が1,000万円を超えた場合は配偶者特別控除を適用することはできません。また青色申告者の事業専従者として給与を受け取っている、もしくは白色申告者の事業専従者である場合も配偶者特別控除の適用はできないため注意が必要です。
参考: http://No.1195 配偶者特別控除|国税庁 (nta.go.jp)
⑤配偶者控除・配偶者特別控除の手続き方法
配偶者控除・配偶者特別控除の手続きの方法は次の2つのパターンがあります。
Ⅰ. 年末調整
配偶者控除等の控除を受ける夫が勤務先で必要書類を提出します。必要となる書類は次の2つです。
1)扶養控除申告書
2)給与所得者の配偶者控除等申告書
これら2つの書類を勤務先に提出することで手続きは完了です。
Ⅱ. 確定申告(還付申告)
年末調整での手続きが間に合わなかった場合でも、確定申告(還付申告)をすることで配偶者控除や配偶者特別控除の手続きが可能です。また、還付申告は納めすぎた所得税を還付してもらうための手続きで育休から5年以内であれば遡って請求することもできます。
⑥扶養の条件に該当すれば社会保険の扶養も入れるの?
ここまで、扶養に入るための2つの条件を満たせば「配偶者控除」または「配偶者特別控除」を受けることができ、税金上の扶養に入ることができるとお伝えしてきました。では社会保険についてはどうでしょう。社会保険の扶養については全く別の制度となるため、先述の条件で社会保険の扶養に入ることはできません。ただし、育休中の社会保険については社会保険料が免除される制度がある為、詳しくはお勤め先の担当部署に確認してみましょう。
育休中は収入が大きく減少するため、先々のことを考え不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし今回ご紹介した「配偶者控除」等の制度を正しく理解し活用することで大きな節税効果が期待でき、税金が還付される場合があります。扶養に入るための条件に該当するか否かをきちんと確認し、該当する場合には忘れずに手続きを進められるように準備していきましょう。
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