新型コロナウィルス感染症やまん延防止措置により経営に影響を受けた事業者の方が、一定の条件を元に貸付けを受ける場合においては、新型コロナ税特法により消費貸借契約書の作成の際に必要となる印紙税が非課税(収入印紙の貼り付けが不要)となっています。
今回は『消費貸借契約書の印紙税非課税措置』について、どのような場合に適用されるのか、その対象となる条件等をご説明いたします。
1.対象事業者
新型コロナウィルス感染症により以下のような影響を受け、収入が減少又は経営状況が悪化した事業者が対象となります。
⑴事業者やその親族、又は従業員等が新型コロナウィルス感染症に感染したことに より収入が減少又は経営悪化
⑵外出等の自粛要請やイベント開催の自粛による収入減少又は経営悪化
⑶賃料の支払い猶予要請等の各種措置による影響を受け収入減少又は経営悪化
2.対象となる消費貸借契約書
非課税措置の対象となる消費貸借契約書とは、次の5つの要件をすべて満たす金銭の貸付けに際して、令和4年3月31日までに作成される消費貸借契約書を言います。
参考:国税庁「消費貸借契約書に係る印紙税の非課税措置について」
※①公的貸付機関…
⑴地方公共団体 ⑵株式会社日本政策金融公庫 ⑶沖縄振興開発金融公庫 ⑷独立行 政法人中小企業基盤整備機構 ⑸独立行政法人福祉医療機構 ⑹預託等貸付金融機関 ⑺転貸者 ⑻指定金融機関 ⑼融資機関
※②一定の金融機関…
⑴銀行 ⑵信用金庫 ⑶信用協同組合 ⑷労働金庫 ⑸農業協同組合 ⑹漁業協同組合 ⑺水産加工業協同組合 ⑻農林中央金庫 ⑼株式会社商工組合中央金庫 ⑽株式会社日本政策投資銀行 等
※③特別に有利な条件…
貸付けを行う者の貸付制度において「利率」、「据え置き期間」、「償還期間」、「貸付金の返済方法」、「貸付金の使途」、「担保の提供」、「保証料率」のいずれかが他の金銭の貸付制度に比べて有利であること
※④特別貸付であることが消費貸借契約書に明記されている…
具体的には以下のようなことをいいます。
(例)
⑴約款の中で、新型コロナウィルス感染症による影響を受けた事業者に対する特別貸付であることが明記されている
⑵新型コロナウィルス感染症による影響を受けた事業者に対する特別貸付であることを金融機関が確認し、消費貸借契約書に記載されている
⑶新型コロナウィルス感染症による影響を受けた事業者に対する特別貸付であることを金融機関が証明する書類が消費貸借契約書に添付されている 等
3.印紙税を既に納付してしまった場合
上記でご説明してきた条件に該当する場合であれば、貸付けを受ける際に作成する消費貸借契約書の印紙税は非課税となり、収入印紙の貼り付けは必要ありません。しかし、印紙税を既に納付してしまった場合でも、「印紙税過誤納確認申請書」を納税地の税務署に提出し過誤納確認を受けることで印紙税額相当金額の還付を受けることができます。
申請期限は契約書の作成日から5年間で、申請手続きの際には「印紙税過誤納確認申請書」と、過誤納となった契約書の原本またはその事実を証明した金融機関が発行する証明書が必要となります。「印紙税過誤納確認申請書」は国税庁ホームページ[手続名]印紙税過誤納[確認申請・充当請求]手続|国税庁 (nta.go.jp)よりダウンロードできますのでご活用ください。
4.まとめ
今回のテーマのポイントは以下の3つです。
①新型コロナウィルス感染症の影響により経営状況が悪化し金融機関から貸付けを受ける際、特別貸付であることを契約書に明示した場合には消費貸借契約書に係る印紙の貼付けが不要となる。
②印紙税を既に納めてしまった場合にも「印紙税過誤納確認申請書」を提出すれば還付を受けることができる。
③印紙税の非課税措置の対象となる契約書は令和4年3月31日までに作成されたもの。また、既に印紙税を納付してしまった場合の還付申請の期限は契約書作成の日より5年以内となる。
収束の兆しが見えない新型コロナウィルス感染症の影響により、融資を受けた、又は融資を検討している、という方は少なくないと思います。既に融資を受け、印紙税を納付している場合であっても今回の制度は還付申請が可能ですので是非ご検討ください。その他の制度や税金等に関してもお困りのことがございましたら、是非当社担当まで気軽にご相談ください。
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