前回当コラムにて青色欠損金の繰戻還付制度についてご紹介しました。今回は新型コロナウイルスの影響により損失が発生した場合に活用できる、災害損失欠損金の繰戻還付制度について⑴制度の概要、⑵対象法人、⑶適用要件をご説明いたします。
- ≪⑴制度の概要≫
◎災害損失欠損金の繰戻還付制度とは…?
(※以下、財務省「欠損金の繰戻しによる還付の特例」より一部抜粋)
災害のあった日から同日以後1年を経過する日までの間に終了する各事業年度又は災害のあった日から同日以後6月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失欠損金額を、過去に繰り戻して(最長2年前まで)法人税の還付を受けることができる制度です。ただし保険金や損害賠償金等で補填が行われた場合、その金額は除かれます。
【災害損失欠損金に該当する例】
(※以下、国税庁「新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取り扱い関係」より抜粋)
○飲食業者等の食材(棚卸資産)の廃棄損
○感染者が確認されたことにより廃棄処分した器具備品等の除却損
○施設や備品などを消毒するために支出した費用
○感染発生の防止のため、配備するマスク、消毒液、空気清浄機などの購入費用
○イベント等の中止により、破棄せざるを得なくなった商品等の廃棄損
還付対象となる災害損失は、棚卸資産や固定資産に生じた損失と、感染症の拡大・発生を防ぐために購入した備品等の費用をいいます。
【災害損失欠損金に該当しない例】
○客足が減少したことによる売上げ減少額
○休業期間中に支払う人件費
○イベント等の中止により支払うキャンセル料、会場借上料、備品レンタル料
棚卸資産や固定資産に生じた損失と言えないものや、感染症の拡大・発生を防ぐために直接要した費用とは言えないものは災害損失に該当しません。
≪⑵対象法人≫
では、次にその対象となる法人を確認してみましょう。
青色欠損金の繰戻還付制度では、一定の条件を満たした法人が対象でしたが、災害損失欠損金の繰戻還付制度においては災害損失欠損金を有するすべての法人が対象となります。
≪⑶適用要件≫
繰戻還付の申請を行うためには次の3つの要件にすべて当てはまる必要があります。
①還付所得が発生する事業年度から災害損失欠損金が発生した事業年度まで継続して確定申告書を提出していること
②災害損失欠損金が発生した事業年度の確定申告書または仮決算による中間申告書を提出していること
③②の確定申告書または仮決算による中間申告書を提出すると同時に「災害損失の繰戻しによる還付請求書」を提出すること
◇申請のポイント◇
申請にあたっては次の2点を抑えておきましょう。
①青色欠損金の繰戻還付制度では前期の黒字と相殺しましたが、今回の災害損失欠損金の繰戻還付制度では青色申告者であれば前々期の黒字とも相殺が可能となる
②今回の制度で還付の対象となるのは国税部分のみ(法人税・地方法人税)となり、地方税は対象とならない
- 今回ご紹介した災害損失欠損金の繰戻還付制度は、災害損失欠損金に該当する損失や費用があればどの法人にも適用されるものです。還付申請手続き等、ご不明な点がありましたら当社担当まで気軽にご相談ください。