前回に引き続き、新型コロナウイルスに関する緊急経済対策により新たな特例措置が採用されました。今回は青色欠損金の繰戻還付制度の対象範囲拡大について⑴制度の概要、⑵対象法人、 ⑶適用要件、⑷還付額の計算方法をご説明いたします。
≪⑴制度の概要≫
◎青色欠損金の繰戻還付制度とは…?
青色申告書を提出する法人で、その確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合に、その事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度に繰り戻して法人税の還付請求をすることができる制度です。
⇒つまり、今期の決算で赤字が生じた場合に、その赤字を前期の黒字と合わせて計算をし直し、既に納付済みの法人税や地方法人税の還付を受けることが出来る制度となります。
今回ご説明する『青色欠損金の繰戻還付制度の対象範囲拡大』は、この還付を受けることが出来る対象法人の範囲が拡大されたという事です。
- ≪⑵対象法人≫
では、その対象となる法人を確認してみましょう。
【現行法】
青色申告書を提出する中小企業者等(※)
(※)中小企業者等とは…
普通法人のうち、次に記載されているものは除かれます
Ⅰ投資法人、特定目的会社、受託会社
Ⅱ大法人との間に大法人による完全支配関係のある普通法人
Ⅲ保険業法に規定する相互会社及び外国相互会社
②公益法人等又は協同組合等
③管理組合法人、許可緑地団体等法人税法以外の法律によって公益法人等とみなされる法人
④人格のない社団等
【特例】※新型コロナ税特法により、特例で対象法人の範囲が拡大されました!
資本金1億円超から10億円以下の法人にも適用(※)
(※)ただし資本金の額が10億円を超える大規模法人などの100%子会社、及び100%グループ内の複数の大規模法人に発行済株式の全部を保有されている法人は除かれます。なお、特例適用対象期間は令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する事業年度に生じた欠損金額について適用されますのでご注意ください。
≪⑶適用要件≫
上記の対象に該当する場合で、次の3つの要件にもすべて当てはまる場合は繰戻還付の申請が可能となります。
- ①欠損金が生じた事業年度、その事業年度の前1年以内に開始した事業年度までの事業年度とも
- に青色申告書(確定申告書)を提出していること
- ②欠損金が生じた事業年度の青色申告書(確定申告書)をその提出期限までに提出していること
- ③青色申告書(確定申告書)と同時に『欠損金の繰戻しによる還付請求書』を提出すること
≪⑷還付額の計算方法≫
還付額=前期法人税額×当期欠損金額/前期所得金額
※分子の当期欠損金額は分母の前期所得金額を上限とします
青色欠損金の繰戻還付制度に関しては、対象が大企業にも適用されることになったため、これまで対象ではなかった企業においても今期が赤字である場合には十分に検討する余地があるかと思います。請求に関してのお問い合わせは当社担当まで気軽にご相談ください。