前回のコラム[収入は増えたが、利益は増えない(2)”機材の購入”]の続きです。利益が増えない理由は一つと述べました。投資費用、経費に見合う収入が上がらないからです。今回は「収入は増えたが、利益は増えないシリーズ」の最後となる3つ目「勤務医、衛生士の採用」をテーマに解説します。
ケース4.勤務医を採用して、収入は増えたが利益が増えない。
経験年数3年以上の歯科医師を採用。
採用した勤務医への給与は50万円、賞与は年間100万円。(給与12ヶ月分と賞与を合わせて年間支払い総額は700万円)
年間必要経費 770万円(2.に福利厚生費として年間支払い総額の10%の70万円を加算)
結論から申し上げますと、このケースの場合、一か月に80万円の収入を増やすと利益は増えます。以下の表は、勤務医を採用すれば分析しなければならない経営の数値です。計算式も解説しています。
収入(年間) | 診療回数(年間) | 診療回数(月間) | |
必要経費 770万円 |
939万円 | 1878万円 | 156万円 |
計算式 | 770万円 ÷ 0.82(*1)= 939万円 | 939万円 ÷5,000円= 1878回 | 1878回 ÷12ヶ月= 156.5回 |
(*1)歯科医院の粗利益率
(*2)1回の診療単価
計算式の解説
まず、年間必要収入を算出します。この場合、年間必要経費を粗利益率で割り戻します。(前回のコラムと同じ計算式です。)
次に年間の診療回数を算出します。 1の収入を診療単価で割ります。
そして、月間の診療回数を算出します。 2の年間診療回数を12ヶ月で割ります。
増患8人/1日で利益が増え、7人/1日で人件費を賄える
上記のケースの場合、人件費を回収する年間必要収入を達成するには、月間156回診療しなければなりません。さらに1日あたりの診療回数を計算します。
156回(月間診療回数)÷22日(1月あたりの診療日)=7回
いかがでしょうか?上記の分析から、、1日に7人のアポイントを増やすと人件費コストをまかなえます。1日に8人のアポントを増やせば利益は増えます。勤務医の採用前には、このシミュレーションは必ず行ってください。チェアの空き時間利用やアポイント帳の列を増やすなどの対応も必要になります。
ちなみに、衛生士の採用では以下の通りになります。是非、ご参考にして下さい。
ケース5.衛生士を採用して、収入は増えたが利益が増えない。
経験年数3年以上の衛生士を採用。
採用した衛生士への給与は25万円、賞与は年間50万円。(給与12ヶ月分と賞与を合わせて年間支払い総額は350万円)
年間必要経費 385万円(2.に福利厚生費として年間支払い総額の10%の35万円を加算)
結論から申し上げますと、このケースの場合、一か月に40万円の収入を増やすと利益は増えます。以下の表は、衛生士を採用すれば分析しなければならない経営の数値です。計算式も解説しています。
収入(年間) | 診療回数(年間) | 診療回数(月間) | |
必要経費 385万円 |
385万円 | 940回 | 78.3回 |
計算式 | 385万円 ÷ 0.82(*1)= 470万円 | 470万円 ÷5,000円= 940回 | 940回 ÷12ヶ月= 78.3回 |
(*1)歯科医院の粗利益率
(*2)1回の診療単価
計算式の解説
まず、年間必要収入を算出します。この場合、年間必要経費を粗利益率で割り戻します。
次に年間の診療回数を算出します。 1の収入を診療単価で割ります。
そして、月間の診療回数を算出します。 2の年間診療回数を12ヶ月で割ります。
増患4人/1日で利益が増え、3.6人/1日で人件費を賄える
上記のケースの場合、人件費を回収する年間必要収入を達成するには、月間78.3回診療しなければなりません。さらに1日あたりの診療回数を計算します。
78.3回(月間診療回数)÷22日(1月あたりの診療日)=3.6回
いかがでしょうか?上記の分析から、、1日に3.6人のアポイントを増やすと人件費コストをまかなえます。1日に4人のアポントを増やせば利益は増えます。衛生士の採用前には、このシミュレーションは必ず行ってください。勤務医の採用と同様に、チェアの空き時間利用やアポイント帳の列を増やすなどの対応も必要になります。
スタッフを採用し、利益を上げる目安をご理解いただけたでしょうか。医院の戦略を立て、計画的に人員体制を整えることによって、医院の利益を最大化し、長期的な安定経営を目指してください。