税務・経営ニュース
COLUMN

巡回監査日誌

書面添付と情報開示

先日、ある銀行の営業担当の方とお話する機会がありました。

私: 「借入をされているお客様が決算書コピーを銀行へ提出されますが、銀行さんの方では『決算書』ってどこまでの書類を求められているのですか?」

営業担当の方: 「できれば税務申告で提出された書類、別表~内訳書・概況書までいただけたら有難いですね。減価償却の明細まで付いていたら完璧です。」

私: 「そうですか。関与先の社長からコピーを頼まれて、B/S・P/Lだけお渡ししたら、銀行さんから『別表も、内訳書も、』と追加をお願いされるようなことがしばしばありまして・・・。」

営業担当の方: 「そうなんです。よく銀行に敵対心をお持ちになって、情報開示を拒まれるような勘違いがあるんです。隠そうとされると、やはり何かあるんじゃないか、とこちらも勘繰りたくなってしまいますし。」

私: 「そうですね。」

営業担当の方: 「経営者の方は銀行の営業担当者を是非味方につけて利用して欲しいところです。営業担当者も融資したい、という強い思いがあるので、全部開示していただけると、そこから拾える良い材料を報告書に載せて本店の審議に回しますので。材料の無いところで『貸してくれ』と言われても、上に回す資料の書きようが無いんですよ。」

私: 「なるほど。ところで『書面添付制度』というのがあるんですけど、ご存知ですか?税理士が決算書の数字を何処まで確認したか、どういう処理が行われたか、を記載して税務申告書に添付する制度なんです。税務署側もそれを見て、税理士に意見聴取して、問題なければ税務調査が省略される場合があるんです。例えば減価償却の処理が税法上と違う場合などの説明書きをするとか。そのような書類も銀行に開示したら、融資いただく場合に何かメリットがあるんでしょうか?」

営業担当の方: 「金利や融資額に直接影響するかどうか分かりませんが、判断材料のひとつにはなると思います。そういう制度があるなら、是非見せていただきたいですね。」

まだ書面添付制度はあまり定着していませんが、これからは税務署だけでなく企業をとりまく銀行などの利害関係者に対しても、有用な資料となる可能性を感じました。会計上も税務上も適正な処理をするのは当然ですが、書面添付制度を推進することが、関与先企業様にも有益であるのを改めて感じた次第です。

先日の会話を関与先様に是非とも説明していきたいと強く思いました。

平成22年06月17日 企業会計部門 田中里佳

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