平成17年8月に日本税理士連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会から、中小企業の会計に関する指針が出されました。また、平成18年5月1日に施行された新会社法を踏まえ、平成18年4月25日に改定されました。
平成11年に弊社のセミナーにて講師を務めたときに、財務の2000年問題を取り上げたことがあります。グローバルスタンダードの名の下に上場企業の多くが会計の世界で悩んでいた時期でした。おもにキャッシュ・フロー計算書、連結会計の導入、時価主義会計への移行、退職給付債務の明示などについて試行錯誤していた時期でもあります。そのセミナーでは…
実質的な債務超過会社が多発する可能性があること
給与制度+退職金制度の見直しなどを今後しなければならないであろうということ
中小企業にも強い財務体質作りが必要であること
などを提案させていただきました。
当時の推測どおり、その波が中小企業にも押し寄せてきました。簡単な貸借対照表をベースに、中小企業の会計に関する指針が企業の財務に与える影響を考察してみたいと思います。
設定: 退職金規定を設けていない企業 状況は以下のとおり
過去に支給実績がある
将来においても支給する見込みが高い
その金額が合理的に見積もることができる企業(仮に15,000千円の退職給付債務とした場合)
上図のように、この企業は過去に積み重ねてきた利益剰余金が退職給付債務に変わってしまいます。 過去の帳簿外にあった財務が顕在化してしまった形なのです。場合によっては、債務超過に陥ってしまう可能性のある企業も多くあるのではないでしょうか?
ただ、一時に退職給付債務の処理をしてしまうと、財務状況や経営成績に大きな影響を与えてしまうので、「特則」も設けられています。というより混乱を回避するための一定の猶予期間が与えられたのが実態ではないでしょうか?
今後シリーズで対応策などの意見をしようと思います。
経営財務部門 川部 俊幸