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税制解説

改正民法(相続法)の施行について

令和1年7月1日、1980年からおよそ40年ぶりに相続法の大幅な改正が行われました。
相続法は人が亡くなった際に、何が遺産になり、誰がどう受け継ぐかといった基本ルールを定めたものです。誰しも関係のある相続について、何が変わったのかポイントを絞ってご紹介します。

今回取り上げる主な改正点は以下の4点です。

  ①預貯金の払い戻し制度創設
②遺留分減殺請求権の金銭債権化
③特別の寄与制度の創設
④配偶者居住権の創設(2020年4月1日より施行)

それでは順に見ていきましょう。

 
①預貯金の払い戻し制度創設

 改正前
 遺産分割の終了までは相続人全員の同意がない限り、預貯金の払い戻しをすることができませんでした。
そのため、葬儀費用や相続債務の弁済などで急な支払いが必要になっても、預貯金の払い戻しができず、支払いが困難となるケースもありました。

 改正後
一定の額(上限あり※)については相続人全員の同意が無くても払い戻しができるようになりました。
※法定の計算式&金融機関ごとの上限(一行につき150万円上限)

 ②遺留分減殺請求権の金銭債権化

 遺留分減殺請求権(改正後:遺留分侵害額請求権)とは?

配偶者や直系卑属(子、孫など)が遺留分(取得できる最低限の相続分)より少ない遺産しかもらえなかった場合、多くの遺産をもらった相続人に対して、遺留分を請求できる権利のこと。

 改正前
遺留分減殺請求に対して現物で返還することが原則であったため、請求をした側とされた側の相続人の間で不動産が複雑な共有関係になっていました。

Ex.)経営者であった被相続人が亡くなり、事業を手伝っていた長男に会社の土地建物(2億円)、長女に預金3,000万円を相続させるという遺言を残した。長女が減殺請求した場合。

 遺留分侵害額:(2億+3,000万)×1/2×1/2-3,000万=2,750万

民法改正4

 改正後
こうした複雑な状態になってしまうことを避けるため、遺留分減殺請求をする者は、遺留分侵害額に相当する金銭での支払いを請求することができるように改正され、遺留分減殺請求権が金銭債権となります。

民法改正7

                       金銭請求

民法改正3

 ③特別の寄与制度の創設

 今回の改正で相続人以外の親族の貢献に報いる制度=特別の寄与制度が創設されました。

 改正前
被相続人の長男の妻のみが被相続人の介護をしており、次男や三男が全く介護をしていなかったとしても、長男の妻は相続人ではないため、一切相続財産を取得することができませんでした。

 改正後
 改正法ではこの不公平を改め、相続人以外の親族が無償で被相続人の介護や看護を行っていた場合には相続人に対して金銭の支払いを請求することができるようになりました。

 ④配偶者居住権の創設(2020年4月1日より施行)

 改正前
 遺産に土地・建物と預貯金がある場合、配偶者が土地・建物を相続すると、生活資金に十分な預貯金を取得することができず、今後の生活資金が不足してしまっていました。

民法改正6

 改正後
配偶者居住権が新設され、配偶者はその土地・建物へ住み続けながら、預貯金などの他の財産についても取得することができるようになりました。

民法改正5

 今回は、相続法の改正点について大まかに解説しました。
この他にも2019年1月13日には財産目録のパソコン作成について、2020年7月10日には自筆証書遺言の法務局保管について改正が行われていますので、より詳しい情報をお求めの際は下記をご参照ください。

【法務省HP】
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html

また、当社には相続をお考えの方のために専門の部門もございます。
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